「きみに逢いたくて」(2) [小説]
左手でギターを手に取る。
右手の人差し指には、黒いビニールテープが巻かれている。指を保護するためだ。夢中になって弾いていると、弦に指が当たって、いつのまにか血がにじんでしまう。だから、保護テープを巻く。思いっきり爪弾くために。
このあいだ出来上がったばかりの曲を練習しているところだ。すぐに、ライブが始まる。練習不足のままの状態で初日を迎えたくない。ツアーのスタートから飛ばしていきたかった。1か月以上間があいて、楽しみにしていたツアーだった。
・・・初日には、あいつも、くる。
このあいだ、逢ってから、もう10日も経っていた。壁に貼られた安っぽいカレンダーを眺めるとも眺めながら、カイは思った。